国交省の「18年度PFIセミナー」
まず、昨今の動向や課題などについて京都大学大学院工学研究科の小林潔司都市社会工学専攻教授が「社会資 本整備における官民パートナーシップのための設計制度」について詳しく解説。この中で小林教授は「所有権 の重要さ」を挙げ、内在する弱インセンティブ問題の政府所有の弱点、品質を無視した費用削減の民間所有の 弱点を指摘。特に民間所有の弱点として「品質に対する需要弾力性が小さいインフラの場合には深刻」と語っ た。また、PFI事業は不完備契約であり、そのために「リスク分担ルール、変更ルール、紛争ルールを契約 段階で処理しておかなければならない。契約の標準化が急がれる」と強調した。 先進事例についてその効果などに関する情報提供は、兵庫県県土整備部まちづくり局公園緑地課の多田欣也技 術指導係長が「尼崎の森中央緑地・スポーツ健康増進施設整備事業」を紹介。民間部門の創意工夫として、施 設面で利用者ニーズに対応するフレキシブルな構造、先端技術を導入しランニングコストの低減(ライフサイ クルコスト低減)と環境への配慮、また、運営面で多様な利用者ニーズに対応する営業時間やプログラムを挙 げた。その成果としては「VFMは当初約11%としていたが、落札者提案で21.4%になったこと、維持 管理・運営費の削減効果が大きく、削減率は設計・建設の約2倍になった」と語った。利用状況は約14万人 (5月31日〜9月30日)、会員数は約1,100人(プール、フィットネス)を数えている。 ファイナンスに関する情報提供は日本政策投資銀行関西支店の池田良直企画調査課長が、公共サイド、民間事 業者サイド、金融サイドについて詳しくそのポイントを指摘。「各プレーヤーのモチベーションと最適なバラ ンスを構築することが必要」と強調した。 最後に国土交通省総合政策局の林雄一郎政策課課長補佐が、国交省におけるPFIへの取り組みを語った。実 施件数としては、8月末現在で全国で253件、国交省所管で53件を数え、増加傾向にあるPFIの現況を 説明。国交省の内訳としては、事業方式別でBTO28件、BOT9件、事業類型でサービス購入型28件、 独立採算型134件といずれも過半数を占めているという。このほか公共側はリスク移転で事業費が縮小され ること、民間側はリスクに合った対値を獲得できるなどPFIのメリット、実施事例、支援措置などについて 説明した。
2006年12月04日
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